長い一生を振り返ってみれば、昔の諺の如く
「後悔を先にたたせてあとから見れば杖をついたり転んだり」
全くそのとおりであったが、やり直すことはできない。
だが男ではないから兵隊の経験もなし。
戦時中の苦労は誰もが味わった苦難の道であった。
考えてみれば私の花形時代は小学生の頃かな。
記憶をたどりちょっと記してみたい。
こう始まる思い出は、時子ばあちゃんの小学生時代の話。昭和3年の頃である。
昭和3年といば、どんな時代なのだろう?
普通選挙が初めて実施されたとか、林富美子の「放浪記」が流行したとかのころだ。
私達は 教科書や本の中でしか知りえない時代である。 @ハナコ
昭和3年4月、中北条小学校へピカピカの一年生で入学した。
西も東も分からない私達。その年昭和天皇の即位の式典が行なわれ、
国民こぞっての祝事が催された。喜びの意味もわからない私達も、
手に手に日の丸の小旗を振り村々を行列して廻ったことを思い出す。
一学期も終わり、明日から夏休みという最後の日、先生から通信簿の
説明があり(甲乙丙)、その他、休み中の注意事項等々。
通信簿を受け取り開いてみれば、まあ甲ばかり。嬉しくて早々に家に帰り父母、
祖母へ説明した。父母は「説明しなくても知っているよ。よかったな」と喜んでくれた。
あの時のよろこびは今でも鮮明に思い出される。
私はこうして貰う通信簿は殆ど全甲で小学校を終わった。